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2021年1月3日日曜日

文献紹介:VDI3824 Quality assurance of PVD and CVD hard coating Inspection planning of hard coatings

題名:VDI3824 Quality assurance of PVD and CVD hard coating Inspection planning of hard coatings

発行者:Verein Deutscher Ingenieure (ドイツ技術者連合)

発行年:August 2001

概要: この規格はPVDやCVDの品質保証のため、特にユーザーとコーティング業者が円滑にコミュニケーションを取れるように制定された。

Part1:ハードコーティングの特徴と応用範囲

Part2:満たすべき仕様

Part3:生産工程

Part4:ハードコーティング用検査

 

・ロックウェルCスケールによる密着性検査
 仕様はVDI3198によるが、コーティングと基板との間の密着性はロックウェルCスケールの圧痕を用いて評価する。 

この試験の特徴

・硬さ試験機を使って迅速、かつ簡単に評価できる。

・コーティングと基板界面について定量的に評価することができる。

・この試験は異なるコーティング-基板同士の評価には適さない。

・基板(基材)の表面硬度はおおよそHRC55から70程度とする。また、更なる硬度を持つ材 料については同等の硬度を持つ基板間での比較に限られる。

・この試験はCVDによるハードコーティングへの適用に限られる。

・備考:信頼ある試験のためにテストピースの状態は徹底的にチェックしなければならない。試験結果を写真に残しておくことは便利である。

文献紹介:VDI 3198 Coating (CVD, PVD) of cold forging tools

 題名:VDI 3198 Coating (CVD, PVD) of cold forging tools 

発行者:Verein Deutscher Ingenieure (ドイツ技術者連合)

発行年:August 1992

概要:真空蒸着によるコーティングの規格。HRCの圧痕から膜の密着性について6つに分類している。

試験条件

試験力:54HRC、 コーティングの厚み:最大5μm

 

試験結果

HF1~HF4:合格 HF5~HF6:不合格

2020年12月28日月曜日

文献紹介:Separation of the sp3 and sp2 components in the C1s photoemission spectra of amorphous carbon films

 題名:Separation of the sp3 and sp2 components in the C1s photoemission spectra of amorphous carbon films

著者:J. Diaz, et. al.,

DOI:doi.org/10.1103/PhysRevB.54.8064

論文採択日:1995.12.18

概要:2種類のアモルファスカーボン膜をPLDでシリコン基板に蒸着し、その硬さはそれぞれ22GPa、40Gpaであった。この膜に対してXPSによってC1sピークを測定したところ、284.3±0.1eV、285.2±0.1eVのピークに分かれ、これらはそれぞれ、sp2-C、sp3-Cと同定された。これから推定されるsp3の割合を推定したところ、硬い膜では2/5、柔らかい膜では1/4であった。次に硬い膜を異なる温度でアニールしたところ、900Kまではsp2とsp3の割合を保っていたが、1100K以上になるとsp3の割合は減少した。また、900K以上のアニールではC1sピークが0.3±0.1eV程、低結合エネルギー側にシフトした。このピークシフトはC1sピーク非対称性の変化とUPSにおけるフェルミレベルでの状態密度の変化に相関がみられた。sp2-C原子やπ結合が存在しているにも関わらず、900K以下の硬い膜でπプラズモンが確認されなかった。

 

・成膜条件

表1:PLD(波長523nm)で成膜したアモルファスカーボン膜 HP: High Power,(1010W/cm2) LP:Low Power(~109W/cm2)。膜厚500Å。

・測定条件

ベースプレッシャー:5×10-11mbar。Mg-KαX線(hν=1253.6 eV)、HeI(hν =21.2eV)、HeII(hν=40.8eV)XPS分解能0.8eV, UPS分解能0.4eV。

 

図1:HP a-C, LP a-C、及びグラファイトにおけるC1sピークの比較。FWHMで比較するとHOPGで1.1eV、HP、LPでそれぞれ1.9eV、1.8eVとなる。


図2:HP a-Cを異なる温度でアニールした場合のC1sピーク。1200Kにおいて1.4eV幅が広がり、0.4eV程低結合エネルギー側にピークシフトを起こしている。


図3:C1sとπプラズモンエネルギーロスピーク。グラファイトとLPにおいてプラズモンピークはC1sピークから6.4eV結合エネルギーが深い側に観測される。HPでは、900K以上においてのみ観測される。

図4:複数温度でアニール後のHP a-C1に対するHeII UPS。グラファイトのスペクトルは参考文献15から引用(hν=45eV)。3eVのところに観測されるΠ結合ピークはアニール温度が上がると増大するが、この傾向は900Kで止まる。


図5:HeI UPS。フェルミ面近傍を拡大。グラファイトに特徴的なピークが全て観測されているわけではないため、a-Cにおけるグラファイト化は完全には起こっていない。 


・結果と考察

a-CのC1sピークフィッティングについて、ローレンツ関数は215meVに固定、ガウス関数は1.25eVを用いた。また、サンプル温度が上がるにつれてsp2ピークについては1300Kで1.2eV、1450Kで1.1eVとガウス関数の幅を狭めた。尚、sp3ピークについては幅を変えていない。また、sp2ピークについては、Donic-Sunjic関数を用いて、非対称性パラメータαを導入した。このαはフェルミレベルでの電子状態密度に関係し、グラファイトや芳香族のC1sピークを表現する際に用いられる。HOPGグラファイトにおいてαを測定したところ、0.14であり、参考文献20や23と一致する。また、Chenによる値0.075よりは大きい。Mn Kα線励起によるピークの非対称性がαの絶対値が不一致となる原因となっている。MnKα線自身の非対称性は一定なので、スペクトル間のαについて相対的な変化のみを見ればよい。

 C1sピークのフィッティングについては5つのパラメータを用いた。それは、sp2とsp3ピークそれぞれの結合エネルギーとピーク幅、そしてsp2ピークにおける非対称性パラメータである。Fig.1.においては、a-Cフィルムのαの値はHPでは0.11±0.01、LPでは0.19±0.01となる。sp3の結合エネルギーの位置は参考文献13より0.2eV大きくなっている。

 sp2及びsp3ピークの結合エネルギー、sp3-Cの濃度、非対称性パラメータについてFig.6に示した。

 

図6:HP a-C膜におけるsp2及びsp3ピークの結合エネルギー、sp3-Cの濃度、非対称性パラメータαをグラフにしたもの

これによると、HP a-Cにおけるsp3の割合は40%となっており、LPの場合の2倍に及ぶ。これは定性的にはHP a-Cの方が表面硬度が高いことと一致する。また、sp2とsp3間のエネルギー差は0.9eVとなっており、これも以前の報告と一致する。エネルギー分解能がどの程度影響を与えているかはわからないが、C1sのピークシフトは以前のものより0.2から0.3eV程大きい。

また、室温から1000Kにまで温度が上がるとsp2ピークが0.3±0.1eV低結合エネルギー側にピークシフトしている。これは帯電効果で示されたものではなく、UPSにおいても同様のシフトを起こしている。更に同様のシフトが光学ギャップを持たないLP a-Cにおいても観測されている。この0.3eVのピークシフトはフェルミ準位での電子状態密度の増大そして非対称性パラメータαに関係している。このC1sピークシフトとフェルミ準位の状態密度の関係はC1sピークシフトが励起された炭素原子の電荷緩和の変化によるものであるということを可能なものにしている。

 アニールしたa-CにおけるC1sピークシフトはグラファイトより低エネルギー側に0.3eV小さく、これはフェルミ準位での状態密度がアニールしたa-Cの方がグラファイトより大きいことを示す。もし、グラファイト層が作られるより高い温度でアニールされれば、層間距離が縮まり、sp2によるsp3の代用がa-C膜の中で起こるであろう。これが起これば、基板面内で膜が膨張するので膜内応力が高まる。プロファイルメーターを使って基板の反りを測定したところ、a-Cの膜内応力が室温では2~5GPaであったところ、1300Kにアニール後では、30GPaにまで増加していた。30GPaに及ぶ膜内応力により層間距離が縮まり、このことによって電荷密度が増大する。アニールしたa-Cのフェルミ準位で状態密度が増大する第2の理由は層内での結合状態が無秩序(bond disorder)になることである。ガウス関数の幅がHOPGでは0.8eVなのに1300Kにアニールしたa-Cでは1.2eVになることより膜内にbond disorderがまだ存在していることを示す。例えば、六員環の代わりに5原子によるリングができて、その電子がフェルミ準位に存在する。

 最後に900K以下のHP a-Cスペクトルにおいて、sp2結合やπ結合電子の存在がXPSやUPSから証明されているにもかかわらず、πプラズモンが欠損していることに言及する。この理由はdisorderによって生じたπ電荷が局在化していることに起因しているかもしれず、このことは半導体的な性質を持つこれらのフィルムが相対的に低い非対称性パラメータの値を持つことと辻褄があっているかもしれない。しかしながら、半導体a-Cにおいてπプラズモンの欠損は一般的な話ではないかもしれない。というのも、HP a-Cより大きな光学ギャップを持つ水素化a-Cにおいてはπプラズモンが観測されているからである。a-Cフィルムにおけるπプラズモンの強度とエネルギーはおそらく、π軌道やlocal disorderを形成するp軌道との重なりが関連しているかもしれない。以下の2つの理由からdisorderはπプラズモンの強度に影響を与えているかもしれない。1つ目:グラファイトと比較して、p軌道との重なりが減少しているかもしれない。2つ目:グラファイトと比較して励起状態が短いためにスペクトルの幅が広くなっているのかもしれない。

2020年12月27日日曜日

文献紹介:Direct evaluation of the sp3 content in diamond-like-carbon films by XPS

題名:Direct evaluation of the sp3 content in diamond-like-carbon films by XPS

著者:P. Merel, et. al.,

DOI:doi.org/10.1016/S0169-4332(98)00319-5

論文採択日:1998. 5. 23

概要:異なるレーザー強度を使って作成したPLDのDLC膜に対してXPS C1sピークを測定した。そのC1sピークを284.4eVと285.2eVの結合エネルギーを有するsp2ピークとsp3ピークに分離して、膜中のsp3炭素濃度について評価した。レーザー強度を0.9×108から7.1×108 W/cm2に変化させるとsp3炭素濃度が33%から60%にまで増加した。これらXPSの変化と比較するためにC-KLL励起を使ってX線励起オージエ分光(XEAS)を測定したところ、両者は異なるレーザー強度に対するsp3濃度変化に対して定性的に同様の変化を示した。XPSの方がsp3濃度が高い傾向を示すが、これらの違いは角度分解光電子分光の結果から示されている通り、表面にsp2炭素が多く存在することが原因である。XPS炭素1sピークの分析は水素化されていないDLC薄膜におけるsp3成分の評価に対して単純で直接的な手法であることが示された。


・実験条件

成膜装置:KrFレーザーによるPLD。熱分解グラファイトターゲット(純度 99.999%)。入射角45°、基板距離4cm

成膜基板:1インチのSi(100)基板。チャンバー内において300℃で15分加熱してから冷却後成膜。膜厚300nm。

分析装置:VG ESCALAB 220i。単色化Al-Kα光源(hν = 1486.6 eV)。パスエネルギーは20eV(XPS)、100eV(XAES C-KLL)。分解能は0.6eV(Ag 3dピークから計算)。表面の酸素は3%以下、水素は1%以下(ERDで測定)


図1:XPS C1sピーク。参照用にPECVDダイヤモンドとグラファイトターゲットのデータも加えてある。レーザーの出力が増えるとsp3成分が増加している。尚、一般的なXPSデータとは異なって、この図では左から右に結合エネルギーが深くなっている。DLCにおけるC1sピークの全値半幅は1.6eVとグラファイト(0.6eV)、ダイヤモンド(1.0eV)より広くなっており、ピークが2成分から成っていることを示している。


図2:C1sピークの分離。ピークの表現についてはガウシアンとローレンチャンを使い、バックグラウンドにはシャーリー型を使った。フィッティングの結果 sp2ピークは284.4±0.1eV(FWHM=1.00±0.05eV)、sp3ピークは285.2±0.1eV(FWHM=1.10±0.05eV)となった。加えて、表面の残留酸素に依存するC-Oピークを286.5eVに追加した。


図3:Fig.2の方法で割り出したsp3炭素の濃度をレーザー強度を横軸にとってグラフにした。レーザー強度が上がるにつれ、sp3炭素は33%から60%弱にまで増加した。

 

図4:XAESにおけるC-KLLピークを1階微分したもの。sp3炭素の濃度はダイヤモンド(sp3-C 100%)とグラファイト(sp2-C 100%)のD値を使って補完した。


図5:XAESスペクトルから計算したsp3-C濃度。レーザー強度が上がるにつれてsp3-C濃度は25%から51%にまで増加しているが、XPSと比べてその値は10~15%低い。


図6:XPSとXAESの結果の比較。両者の違いは光電子の脱出深さから説明できる。XPS電子の運動エネルギーは1200eV、XAES電子の運動エネルギーは280eVとなり、そこから計算する脱出深さはそれぞれ、2nmと1nmとなり、XAESの方が脱出深さが浅い。


図7:角度分解光電子分光から測定したsp3-C濃度。検出角Θが大きいほど、表面敏感な測定結果となる。角度を大きくしていく(=表面敏感にしていく)と、sp3-C濃度が45%から37%に減少していることが分かる。

2020年12月24日木曜日

文献紹介:X-ray photoelectron spectroscopy:Towards reliable binding energy referencing

 題名:X-ray photoelectron spectroscopy:Towards reliable binding energy referencing

著者:G.Greczynski and L.Hultman

DOI:doi.org/10.1016/j.pmatsci.2019.100591

論文採択日: 2019.7.30

概要:XPSによる論文は年に9000報を数え、表面科学において結合状態を決定づけるためになくてはならないものになっている。しかしながら、結合エネルギーの基準を決めることはその標準がないことから、大変分かりにくいものとなっている。XPS測定の初期においては、大気にさらされる表面に付着した炭素を使って結合エネルギーの標準することが一つの方法であった。今日においてもその付着炭素の起源や構成が明確でないにもかかわらず、全ての測定試料に対して多く用いられている。本研究では、この付着炭素のC1sピークによる結合エネルギーの補正が恣意的であることを示し、これによって不正確なスペクトル解釈や本来とは逆の結果、そして同じ化学結合状態であるにも関わらず結合エネルギーが唯一ではなく、ある範囲に渡って報告されていることを明らかにし、このような事態を警告する。この論文の目的は史実に基づく展望を以てXPSのなすところの評価、測定手法の提供、そしてC1sピークを参照することの根拠の薄い作り話を示すことによって、近年の発見に対して理解可能な説明を提供することである。毎年、膨大な量のXPSが報告されるために不適当な結合エネルギーの参照が導かれている。我々の意図はこの60年間に報告されている問題に関して大きくなりつつあるXPSのコミュニティーに対して自覚を促し、C1sによる結合エネルギーの参照方法に対する最適解を先導することである。


Fig.22:論文で報告されている付着C1sピークの結合エネルギー位置。年代を経るにつれ、そのエネルギー位置の報告幅が広がっており、ISOで規定されているC1sの範囲を超えてしまっている。


 Table.1:XPSの論文中に現れる不一致に関する引用。緑:結合エネルギー参照のための付着炭素の説明、赤:手法に関する記述、青:C 1s peakのために用いられた結合エネルギーの値
 
 
著者:G. Greczynski
 G. Greczynski is an Associate Professor in the Department of Physics, Linkoping University (LiU). He is a fellow of the American Vacuum Society. Dr.Greczynski received his PhD degree in Materials Physics from Linkoping University in 2001 and has an eight-year industrial track record. He heads the Fundamental Science of Thin Films Group of the Thin Film Physics Division and acts a Director of the Surface Analysis Laboratory. Greczynski has more than 20 years hands on experience in photoelectron spectroscopy and is one of pioneers in high-power pulsed magnetron sputtering (HiPIMS) research through his present position at LiU and his previous employment at Chemit Ionsputtering, the original HiPIMS company. His research interests are presently focused on low-energy ion/surface interaction for nanostructure control during low-temperature growth of thin films by physical vapor depostion. He has coauthored more than 100 papers with > 3400 citations.

文献紹介:Argon atoms insertion in diamond: New insights in identification of carbon C 1s peak in X-ray photoelectron spectroscopy analysis

 題名:Argon atoms insertion in diamond: New insights in identification of
carbon C 1s peak in X-ray photoelectron spectroscopy analysis

著者:Jean-Francois Veyan

DOI:doi.org/10.1016/j.carbon.2018.03.053

公開日:2018.3.22

概要:単結晶、多結晶ダイヤモンド、及び、グラファイト膜におけるXPS C1sピークを調べた。特にC1sピークにおけるsp2-Cとsp3-Cの結合性について調べた。


・試料

ウルトラナノクリスタルダイヤ(UNCD)

ナノクリスタルダイヤ(NCD)

マイクロクリスタルダイヤ(MCD)

単結晶ダイヤ(SCD)

グラファイト(黒鉛)


・実験条件

XPS分析装置:Versa Probe II ベース圧力 4×10-8Pa、光源:単色化Al Kα線、測定領域 200×200μm2、パスエネルギー23.2eV、測定ステップ0.2eV (CSDのみ0.1eV)


・実験結果

Fig.1:XPSにおけるC1sピーク。左から(a)UNCD、(b)NCD、(c)MCD、(d)SCD、(e)グラファイト。青いピークと赤いピークはそれぞれ、アルゴンスパッタリング(1kV)の前後。(a)から(d)にかけては、スパッタ前と比べて、スパッタ後ではピークが2つに分かれている(CDとCD-Ar)。一方、(e)においてはピーク形状がほとんど変わっていない。

 

   
Fig.4:SCDに対してArイオンスパッタリングを繰り返していった時のC1sとAr2pピーク。上から下にかけて加速電圧を加えながら、Arスパッタを重ねていく。C1sとAr2pピークの結合エネルギーシフトが連動していることが分かる。
 


Fig.5:Fig.4におけるC1sとAr2pのピークエネルギー差を横軸にアルゴンスパッタの加速電圧を取って表したグラフ。加速電圧が上がると、エネルギー差は小さくなっていく。


Fig.7:アルゴンイオンスパッタを行ったSCDに対して、RBS(ラザフォード後方散乱)のスペクトル。どちらもアルゴンピークが検出されている。左側の#2、右側の#1はアルゴンスパッタを行ってから、それぞれ6ヶ月と2週間後。

Fig.8:XPSのピーク面積から求めた最表面におけるアルゴンの割合。加速電圧に応じて増えていくが、加速電圧2kVで2%となり、飽和する。