2021年4月29日木曜日

文献紹介:Guide to making XPS measurements on nanoparticles (part4)

 B.Deposition approaches
多くの表面分析含む分析装置がナノ粒子を測定するのに基板を必要とする。粒子の蒸着法に関連する問題は、分析上の問題に基板の性質が関連することである。

1.Substrates
 使うべき基板は試料の性質や分析で知りたい情報に依存する。XPS分析には多くの基板が用いられており、分析者の勘や経験によって選ばれる。良く用いられるのは、清浄な金、カーボン、シリコン、インジウム、ポリカーボネートやPTFEである。重要なのは、清浄性や基板からのピークが目的の測定と干渉しないかどうかなどである。
 シリコン基板は、変化が少なく、清浄にするのが簡単で、平滑でもあるためよく用いられる。十分な量の粒子が基板を覆っていれば、基板の清浄性はそれほど重要ではないかもしれないが、シリコン基板の清浄化方法は多く知られている。清浄なシリコン表面に関して1つ知られている潜在的な問題は、表面に液滴を垂らしたときに、親水化表面により、、コーヒーリングと呼ばれるものが形成される。
 PTFEも良い基板となりうる、というのは、CF2によるC1sピークが、ナノ粒子由来のC1sピークと大きく離れるためである。このPTFEの不利な点は、導通性が良くないことである。

2.Solution deposition
 溶液からNPを沈殿させるのに一般的な方法はドロップコート、スピンコート、サンプルディッピングなどが含まれる。
 ドロップコートはNPを含んだ液体の液滴を基板に垂らして、その後、基板を乾燥させる。何度も操作を行うと、層ができて、基板を完全に覆うので基板界面からの信号を拾わないXPS分析をすることができる。場合によっては、小さなOリングを利用して、液滴を囲うこともある。Belseyらはペプチドコーティングされた金ナノ粒子について研究室間の比較について調べた。この調査結果の最も重要な点は実験中に注意を払い、用いられているプロセスを確認することによって、良い実験試料が得られているということだった。この研究では、真空乾燥によって時間短縮することにより、炭素の汚れや不純物の混入が最小に抑えられたことが分かった。スピンコートはドロップコートで難があるときに用いられる。スピンコートの利点の一つは膜厚を制御できることにあるが、試料を多く必要とし、実験には欲しい材料のスピンスピードカーブを算出する必要がある。
 ソリューションディッピングは基板上に粒子の密度を低く堆積させるのに用いられ、XPS測定のためにはあまり使い勝手が良くない。しかしながら、ナノ粒子個別を見たいときや、光電子放出顕微鏡、シンクロトロンベースの光電子分光やTEM観察をしたい時に用いられることがある。

3.Dry particle deposition
乾燥しているナノ粒子の堆積に最もよく使われるのが、パウダー分析である。この方法は、(a)両面テープを使って、(b)粒子をサンプルホルダーに固定する、もしくは(c)粒子を基板に押し付けて固定することである。
 両面テープの使い方はいたって普通である。LochnerによるとXPS測定の際には両面カーボンテープが良く用いられる。電導性の良い炭素や銅の両面テープがよく利用されるが、Pacific Northwest National Laboratoryでは、通常の両面テープが標準である。テープに導電性がなくとも、中性化システムを備えたファイ・カンテラにおいて良いデータが得られている。
 HellgartとChadwickによって粉末XPSのための特別な試料ホルダーが開発された。このホルダーでは、試料を小さなカップに包んで試料ロスを最小に抑えることができる。このようにその研究室の安全規制に従って適切に注意することで、ナノ粒子の吸入を抑え健康リスクを避けることができる。

文献紹介:Guide to making XPS measurements on nanoparticles (part3)

 A.Washing and separation from solution
図2に示すようにナノ粒子の溶液からの分離は多くの場合、透析(dialysis)、遠心分離法(centrifugation)、ダイアフィルトレーション(diafiltration)もしくは、これらの組み合わせで行われる。Aの「flash dry」フィルタリングプロセスは反応環境から粒子を抽出するのにうまく用いられる。用いるべき明確な手順は経験と関連した実験室、そして資料の性質に依存する。例えば、低濃度、もしくは粒子径が5-10nmと小さい粒子に対して遠心分離機は時間の消費、そして非効率である。透析にかかる時間が長ければ長いほど、本来不安定な粒子や、粒子コーティングにとって、互換性がなく異なるものとなる。
 透析とダイアフィルトレーションは時としてナノ粒子を合成する際にも使用される。Techaneらは溶液中にあるSAM膜で被覆された金ナノ粒子から、余分なチオールとイオンを取り除くのに利用し、以下に述べる他の遠心分離法よりも効率的に純度をあげることを発見した。
 遠心分離法は溶液中の粒子濃度をあげ、粒子が入っていない上澄み液を排出し、きれいな溶媒中に粒子を分散させることができる。この遠心分離法は不純物を除去し、望む清浄度を達成するまで複数回、実施されることがある。ダイアフィルタレーションは連続したフローシステムであり、Sweenyらは、透析、もしくは溶媒洗浄によって濃度の高いナノ粒子を作れることを発見した。
 どの程度の清浄度が必要であるとか、どのプロセスが最も効率的であるかを問うのは当然のことである。La Spinaはクエン酸安定金ナノ粒子におけるこれらの問題に直接言及している。彼らは、粒子を洗浄するのに、2回の遠心分離は4時間サイクルの透析を12回行うことと同等であることを発見した。この研究の中で、遠心分離によって得られた粒子はより効率的に機能することが分かった。また、研究者達によると3回遠心分離を行うと、粒子がより集まり、分散しにくくなる。これらは粒子をどの程度のクリーニングが有用、もしくは効果的であるかを理解し、粒子を分析するのに有益な情報である。
 Nurmiによって記述されたフラッシュドライングフィルタリングプロセスは溶液中で活性であり、分析のためにその反応を止めるたて粒子を分析するために設計された。このフラッシュドライング法において、粒子は真空装置を使って制御されたグローブボックスの中で溶液から除去される。元々の溶液を取り除くために粒子をフィルターに注いだ後に、アセトンのような吸湿性溶剤ですすいだ。このプロセスによって時間とともに化学状態を変化させる粒子の凝集を防ぐのに有用であることが分かった。
 多少の炭素残基は通常、洗浄後のナノ粒子表面に残っている。注意を払うことによって、この種の汚れを最小にできれば、その過程が有効かどうか、改良されているかどうかといったことを比較するのに役に立つ。Wangらの金ナノ粒子の研究によれば、汚染層の厚みは0.05nmかそれより薄いくらいが良いようである。


 

文献紹介:Guide to making XPS measurements on nanoparticles (part2)

 IV.TIMING AND PROVENANCE INFORMATION-WHEN TO MAKE A MEASUREMENT AND INFORMATION TO RECORD

ナノ粒子の性質は、合成経路や試料の保管や、取り扱いに影響を受けるので、測定のタイミングはXPSを測定に関連してくる。典型的な測定タイミングは以下のとおり。(a)合成してすぐに測定し、粒子の本質や合成経路と矛盾しないかどうかを確認する。(b)試料処理中に測定し、汚染や、表面機能性について確認する。(c)試料状態を確認するために応用処理に使う前。ナノ粒子において試料合成、貯蔵、取り扱い履歴の潜在的な影響があるので、ナノ粒子の履歴、評価のタイミングやその詳細に関して情報を保存しておくことは重要である。この履歴は時として「履歴情報」として呼ばれ、ナノ粒子や他のナノ材料の性質を保証するうえで重要な要素となる。記録の一部分や再現性を保証する一部分として、これらの情報はXPS測定の情報(データやパスエネルギー、感度、透過関数に関する情報)と同様に重要である。

V.SAMPLE PREPARATION
 試料を破壊したり、変化させずに測定するために必要となる準備の全体像を図1に示す。場合によっては、試料の変化を最小にする、もしくは変化しないようにするために制御された環境で試料を取り扱うことが必要不可欠となる。
 重要な問題は溶液に分散した粒子の場合で、というのも多くの粒子がイオンや有機分子の混合物に囲まれているからである。これら粒子から、溶液からの汚染を最小にし、表面のコーティングを保持したまま、溶液を取り除くことに取り組む必要がある。一連の処理は有効性の程度が異なって利用される。これらの多くはISO 20519-4として要約されており、表面分析のためのナノ粒子の準備という章には他の関連した試料処理手順によってナノ粒子を準備するためのいくつかの例が記載されている。
 図1に示すように粒子は溶液、もしくは粉末となっている。分析方法に応じて、試料を清掃、洗浄する必要や、溶液に入れたり、基板上に展開したりする必要がある。幸いなことに、多くのXPS測定にとって図1(b)のように山状(粉末)の状態で十分である。分析対象(i)、(ii)と(iii)にとってナノ粒子からの信号を検出するために基板全体をナノ粒子で覆っておくことは重要である。単球モデルの限界と試料準備の用例についてセクション6で議論する。多くの場合、ナノ粒子に対して複数の分析を行うことが望ましく、図1に示したように多くの試料形状に対して同様の処理が必要かもしれない。

 


 

2021年4月17日土曜日

真空用有機材料

 ・エポキシ 耐熱温度:120℃

・塩化ビニル 耐熱温度:54℃

・ポリエチレン 耐熱温度:100℃

・3フッ化エチレン(ケル-F) 耐熱温度:200℃

・テフロン 耐熱温度:280℃

・ポリイミド 耐熱温度:275℃

・フロロエラストマー(バイトン) 耐熱温度:150℃

・パーフロロエラストマー(カルレッツ)  耐熱温度:275℃

 

参考文献

真空用材料

2021年4月12日月曜日

研究における助成金紹介サイト

 ・サイエンスポータル ファンド・各種募集

 ・大阪大学 外部資金公募情報 

・助成財団センター 

 

ThinkPad X1 Carbon 5th (2017)に関するリコール

 今更だが、自分が使っているThinkPadがリコール対象になっていた。なんでも、バッテリー関係に不具合があって、発火する可能性があるらしい。

ThinkPad X1 Carbon第5世代ノートパソコン無償点検・修理のお知らせ

 

3Dプリンター用のデータを作成する方法(CAD研)

 3Dプリンター用のデータを作成する方法

 

 

fusion 360の使い方

 fusion 360 の使い方
CADデータを作る。
STLファイルに変換。
3Dプリンタに附属のソフトウェアを使って、スライスを作る。

・直方体モデルの作り方
「デザイン」→「作成」→「直方体」を選択
(この時、左上のキューブで作りたい面を選ぶ)
・ドラッグすると直方体のサイズを記入する画面がでてくるので長さ、幅、高さを記入してOKを押す


・データを保存した後、エクスポートから拡張子STLを選んで、エクスポートを行う。

・エクスポートには時間がかかり、ステータスのバーを確認しながら待つ。


windows添付ソフトで確認したところ。

2021年4月1日木曜日

文献紹介:Guide to making XPS measurements on nanoparticles (part1)

  題名:Guide to making XPS measurements on nanoparticles

 著者:Donald R. Baer

DOI:doi.org/10.1116/1.5141419

 

I.INTRODUCTION
 ナノ粒子をはじめとするナノ材料におけるXPS測定は様々な情報をもたらすが、ナノ材料特有の特殊な手順が必要となる。まず、ナノ粒子はそれに占める表面の割合がバルク材料と比較して大きく、その影響を大きく受ける。ナノ粒子はその表面構造や応用が多く考えられるが、その一方で、研究者たちは表面化学などが難しいことを分かっており、そのためナノ粒子やナノ材料の評価にはやるべきことが多くあることを分かっている。
 この文章はナノ粒子のXPS測定を行う際に考慮すべきことを示しており、全ての解決策について述べているわけではない。
 話題としては以下のものをあげる。
(a)XPSの測定対象
(b)測定試料の取り扱いや測定によるダメージに関する知識
(c)測定や分析するタイミング
(d)試料準備
(e)測定方法


II.MEASUREMENT OBJECTS/DESIRED INFORMATION (ナノ材料のXPS測定に必要な情報)

(i)定性的な情報 - ナノ粒子はどのような材料でできており、どの様な表面を有しているか? 予想外の汚染はされていないか?表面元素の化学状態については予測できるか?これらの質問は定性的ではあるが、時として測定確認をするために必要となる。一つ例をあげるとPTFEの表面には、製造プロセスに関連して銅酸化物のナノ粒子が確認されることがある。光電子分光の分析深さは光エネルギーと素材に依存する(ただし、通常は10nm程度である)ということは覚えておいた方が良い。粒子サイズが小さければ、XPSは表面とバルクの比に敏感になり、一般的には、粒子表面、表面コーティング、そして粒子中心部については、部分的に感知する。

(ii)相対的な定性情報 - 汚染はどれくらいあるのか? 組成や分析結果については、昨日、先週、先月測定したものと同じか?表面の機能性は異なるバッチ間でも一貫性は持っているか? 多くの場合、これらの質問はXPSの定量分析の「標準的」なアプローチによって答えが得られることが往々にしてある。粒子表面の機能性が有効にならないことはこの部分の例である。

(iii)定量的な化学と物理的な構造情報 - 粒子における表面層の厚みはどの程度か?その粒子は複数の層構造を持っているのか? 一連のデータ分析や分析方法について色々な手法を用いることで、ナノ粒子の本質の詳細を抽出することが可能となる。詳細なモデルを用いて表面層の厚みについて定量的な評価をすることはこの種の応用である。

答えるべき質問とナノ粒子の本質は必要なサンプル準備や収集すべきデータに必要な分析方法に影響を与える。粒子が乾燥しており、分析対象が表に出ている場合はサンプルクリーニングはあまり必要ないかもしれないが、分析の多くはスペクトルから抽出することになる。対照的に、ナノ粒子が溶液中にある場合は、サンプルから溶液を取り除く作業が必要となり、溶液から粒子の表面構造を保持したまま溶液を取り除き、重要な要素は詳細な分析の中に含まれるように努力しなければならない。


III.SAMPLE CHANGES AND ALTERATIONS

ナノ粒子において組成や、サイズ、表面状態が意図したものや期待したものと異なっているということはよくあることである。これらの理由の中には、合成プロセス中のわずかな変化、表面化学状態を得ることの重要性、ナノ物体が周りの環境に応じて変化しやすいことが挙げられる。酸化や、測定環境によって全ての粒子ではないにしても変化を起こすので、経過時間や操作に対して安定しているということは有難いことである。