2020年12月20日日曜日

文献紹介:Comparison of Stainless Steel 316L Parts Made by FDM-and SLM-Based Additive Manufacturing Processes

 金属3Dプリンタに関する論文を読んだので、その記録。

題名: Comparison of Stainless Steel 316L Parts Made by FDM-and SLM-Based Additive Manufacturing Processes

著者:HAIJUN CONG, et. al.,

DOI:doi.org/10.1007/s11837-018-3207-3

公開日:2018.11.02

概要:SLMとFDM法を使って試験片(SS316L)を作製し、強度試験や寸法精度などの比較を行った。

 

・試験試料

SLM法:3Dプリンタとしては「Farsoon FS271M」を使用し、材料としては「METCOADD 316L-A」を使用した。

FDM法 :3Dプリンタとしては「Flashforge Dreamer」を使用し、材料としては「BASF Ultrafuse 316LX」を使用した。


・試験装置

密度及び空隙率:AccuPyc 1340 gas pycnometer

光学顕微鏡観察:Olympus BX53M

引張試験:Instron 50-KN

硬度試験:ロックウェル試験機(Bスケール) 

収縮率(FDM):SolidWorksで作製したモデルと比較

表面粗さ測定:Keyence VR-3000 3D


・試験結果

密度:FDMは7.88g/cm3、SLMとAISI type 316L(比較のためのバルク材料)は8g/cm3であり、空隙に率に直すと、FDMは1.5%、SLMとAISIは空隙なしとなる。

 

光学顕微鏡観察(論文 Fig3から引用)

左側(a)がFDM、右側(b)がSLMによるもの。FDMによるものは等方的であるが、SLMは層状になっている。これより、FDMの方が延性、展性に富むと推察することができる。

 

引張及び硬さ試験(論文Table1及びFig.4から引用)

 引張特性について、BulkのAISI type SS 316L(熱処理済)と比較して、FDMによるものは低く、SLMによるものは高い。また、FDMについてその空隙率のせいで破断時の伸びがAISIに比べて小さくなっている。このような変化は、欠陥(dislocation)が起点となるので、それがないSLMは降伏強度が大きくなっている。硬さ試験(HRB)については、FDMはAISIより低く、SLMはAISIより僅かに高い、つまり同等の硬さが示されている。


・まとめ

Ultrafuse 316LXフィラメントを使って、FDMによる3Dプリンティング造形品を作って、SLM品と比較した。光学顕微鏡観察によって、FDM品が等方的な構造をしていることが分かった。また、AISI品やSLM品と引張特性について比較した。これらの結果から、SLM品ほど厳しい品質を要求されない場合はFDMによる生産はコスト的に有効な方法である。

 

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