2022年12月21日水曜日

Preface(1/3): Physical Chemistry from a Diffrent Angle

 経験上、熱力学の基本量であるエントロピーと化学ポテンシャルの2つは特に理解が困難である。エントロピーSは温度Tに関連する量であり、化学ポテンシャルμは物質量nに関連する量である。SとTのペアはあらゆる熱に関する作用を担い、その一方で、μとnのペアは化学反応、相転移といった物質が関与するあらゆる過程を制御する。その結果、Sとμには、素人考えでも相通じるものがある。

 本書では、エネルギーに加え、これらの中心的な量について、より単純なアプローチ方法を初学者に提案する。これらの量は、ある種の「指名手配書」を作るように典型的で簡単に観測できる物理量によって特徴づけられる。この現象論的な記述は、古くから行われてきた長さや、時間や、質量を測定するような直接的な測定法によって支えられている。

 このアプローチによって、化学ポテンシャルに基づいた予測といった実践的な結果が導かれる。更に、化学ポテンシャルは物理化学的な問題を扱う上で重要な鍵になる。この中心的な概念に基づけば、多くの他の分野への冒険が可能となる。温度、圧力、濃度における化学ポテンシャルの依存性は質量作用則、平衡定数の計算、溶媒和の法則、相図の作成といった様々な分野への「入口」である。この概念はたやすく衝突現象、拡散過程、表面効果、電気化学過程などに拡張することができる。更に同様の手法を使えば、普段はなかなか見ることのできない原子・分子レベルの問題まで解決できる。この手法により、エンタルピーH、ギブスエネルギーG、活性度aなど、従来使われてきた多くの熱力学量を排除することができる。これらの物理量の使用は排除されるわけではないが、ほとんどの場合、余分なものである。最適化された微積分を最適化することにより、計算が直感的に予測可能で、簡単に検証できるようになる。

deduction:控除
calculus:微積分

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