題名:Guide to making XPS measurements on nanoparticles
著者:Donald R. Baer
DOI:doi.org/10.1116/1.5141419
I.INTRODUCTION
ナノ粒子をはじめとするナノ材料におけるXPS測定は様々な情報をもたらすが、ナノ材料特有の特殊な手順が必要となる。まず、ナノ粒子はそれに占める表面の割合がバルク材料と比較して大きく、その影響を大きく受ける。ナノ粒子はその表面構造や応用が多く考えられるが、その一方で、研究者たちは表面化学などが難しいことを分かっており、そのためナノ粒子やナノ材料の評価にはやるべきことが多くあることを分かっている。
この文章はナノ粒子のXPS測定を行う際に考慮すべきことを示しており、全ての解決策について述べているわけではない。
話題としては以下のものをあげる。
(a)XPSの測定対象
(b)測定試料の取り扱いや測定によるダメージに関する知識
(c)測定や分析するタイミング
(d)試料準備
(e)測定方法
II.MEASUREMENT OBJECTS/DESIRED INFORMATION (ナノ材料のXPS測定に必要な情報)
(i)定性的な情報 - ナノ粒子はどのような材料でできており、どの様な表面を有しているか? 予想外の汚染はされていないか?表面元素の化学状態については予測できるか?これらの質問は定性的ではあるが、時として測定確認をするために必要となる。一つ例をあげるとPTFEの表面には、製造プロセスに関連して銅酸化物のナノ粒子が確認されることがある。光電子分光の分析深さは光エネルギーと素材に依存する(ただし、通常は10nm程度である)ということは覚えておいた方が良い。粒子サイズが小さければ、XPSは表面とバルクの比に敏感になり、一般的には、粒子表面、表面コーティング、そして粒子中心部については、部分的に感知する。
(ii)相対的な定性情報 - 汚染はどれくらいあるのか? 組成や分析結果については、昨日、先週、先月測定したものと同じか?表面の機能性は異なるバッチ間でも一貫性は持っているか? 多くの場合、これらの質問はXPSの定量分析の「標準的」なアプローチによって答えが得られることが往々にしてある。粒子表面の機能性が有効にならないことはこの部分の例である。
(iii)定量的な化学と物理的な構造情報 - 粒子における表面層の厚みはどの程度か?その粒子は複数の層構造を持っているのか? 一連のデータ分析や分析方法について色々な手法を用いることで、ナノ粒子の本質の詳細を抽出することが可能となる。詳細なモデルを用いて表面層の厚みについて定量的な評価をすることはこの種の応用である。
答えるべき質問とナノ粒子の本質は必要なサンプル準備や収集すべきデータに必要な分析方法に影響を与える。粒子が乾燥しており、分析対象が表に出ている場合はサンプルクリーニングはあまり必要ないかもしれないが、分析の多くはスペクトルから抽出することになる。対照的に、ナノ粒子が溶液中にある場合は、サンプルから溶液を取り除く作業が必要となり、溶液から粒子の表面構造を保持したまま溶液を取り除き、重要な要素は詳細な分析の中に含まれるように努力しなければならない。
III.SAMPLE CHANGES AND ALTERATIONS
ナノ粒子において組成や、サイズ、表面状態が意図したものや期待したものと異なっているということはよくあることである。これらの理由の中には、合成プロセス中のわずかな変化、表面化学状態を得ることの重要性、ナノ物体が周りの環境に応じて変化しやすいことが挙げられる。酸化や、測定環境によって全ての粒子ではないにしても変化を起こすので、経過時間や操作に対して安定しているということは有難いことである。
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