2021年5月3日月曜日

文献紹介:Guide to making XPS measurements on nanoparticles (part5)

 VI. ANALYSIS NEEDS AND APPROACHES
 予想通り、測定対象によって収集されるデータと分析手法のタイプが決定される。もし、第一に必要とされる情報がナノ粒子表面の汚染物質の確認であれば、ピークと化学状態について標準的な方法を用いて、分析データの中の元素や化学結合状態やXPSスペクトルを決定することができる。同様に同じサイズの一連のナノ粒子の合成や機能化における一貫性の決定はXPSピークの相対的な強度比、または粒子の幾何特性の詳細を考慮せずに一般的なXPSピーク比の定量化を行い確認されるかもしれない。
 しかしながら、試料のナノ構造はピーク強度や相対的な強度比、結合エネルギーやバックグラウンドに影響を与えるので、ナノ粒子の性質に関して多くのこと知るには、手順を逆にして、XPSスペクトルを利用することが可能となる。論文や、適切なデータやモデルを用いて、粒子径や粒子が単層、もしくは複数層のコーティングかどうか、シェルの厚み、表面機能化の程度に関する情報を学ぶことが可能となる。
 分析面が平坦である場合とナノ粒子である場合の大きな違いについて図3に示す。ナノ粒子の核からの電子は分析器に到達するために様々な距離を移動してくるので、コーティングと基板の光電子スペクトルの比率は粒子径に応じて変化する。粒子が10nmより小さい場合は、XPSは粒子の頂点と多少の底面(からのスペクトル)を意味する。粒子径が大きくなるにしたがって、粒子の「目に見える」外側がXPSと相対的な信号強度によって意味されるようになり、図3の最初の絵に示されるように、非弾性散乱のバックグラウンドによる性質がノーマルエミッション分析条件を確かめるようになる。
 ナノ粒子の定性的なXPS分析における重要な要求のひとつはナノ粒子の層の厚みを決定することである。層の厚みは粒子サイズに関する仮定と知識を伴うモデルの取り組み方を用いて決定される。(適切なXPSモデリングプログラムの要約については参考文献56、例については参考文献57を見よ)
 図3と図4の双方において、ナノ粒子からのXPS信号が1つの粒子から起きているように描かれている。Werner, Powellらの研究では、ランダムに分布しているNPに適用するピーク強度のための単球モデルが示されている。試料準備と単球モデルでは2つの限界が記述されている。第一に、単球モデルは電子の平均自由行程が粒子サイズを越えるまで適用される。第二に図1bで示されるように準備された試料が機能するような単球モデルはピーク強度にのみ適用可能であり、光電子ピーク周辺の非弾性信号には適用できない。ナノ粒子によってのみ発生する光電子ピーク周辺の非弾性バックグラウンドは定性的にナノ粒子コーティングの厚みを決定しうることを実証した。この環境下では、XPS測定は図1aに示されるように散乱させられるに違いない。



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