NPの層の厚みを決定するためのもっとも一般的な方法は図4に示されるようにNPの殻、もしくは殻の核からの光電子強度の比Aで表現される異なった層や核からのピーク強度比を用いることである。
Shardらは既知の核の半径を持つナノ粒子から殻の厚みを抽出する単純な方法を開発した。その方法ではNPは球状であり、同じ大きさの半径と層の厚みを持つことが想定されている。Shard達は光電子の弾性散乱の効果が平坦基板上の被覆層の厚みを決めるのに用いられるのに効力のある希薄化によって表現されることを発見した。この相対的に単純な方法は、はじめのうちはコアシェル粒子の殻の厚みを決めるために用いられていたが、最近はコアシェルシェル粒子に対しても拡張されてきた。
Shardモデルは核からの正規化した信号強度と層の厚みを提供するための有効な希薄化に関する情報を持つ適切な層を結合する分析式を利用する。殻と被覆の結合に関係したこのモデルに固有な正確さとその限界は詳細に研究されてきた。このモデルは有機材料におけるシェル層の厚みを決めるのには機能するが、強く散乱する殻を持つコアシェル粒子をのシェル層の厚みについては過大に見積もってしまう。広い範囲のコア直径とシェルの厚みを伴うAu核/C殻、C核/Au殻、Cu核/Al殻、Al核/Al殻に対する光電子ピーク強度のシミュレーションのフォローアップ研究によって、Shardによって見積もられた殻の厚みの値は現行のものより10%良いことが示された。
SESSA(Simulation of Electron Spectron for Surface analysis)というコンピュータプログラムとデータベースにはXPSスペクトルをシミュレーションするのに必要となるデータが含まれている。はじめのうちは、データベースは層構造をシミュレーションするために用いられていたが、新しいバージョンでは、ナノ粒子のモデリングも追加されている。研究の中には、SESSAをナノ粒子に最大限、適用することに焦点をおいているものもあるが、他の研究では、SESSAを具体的なナノ粒子系に適用しているものもある。
Werner達はXPSピーク強度におけるナノ粒子の形状の影響を調べるためにSESSAを利用し、測定が空間的な位置関係と無関係な時は1粒子近似がナノ粒子の集合体に有効であることを示した。この結果によって相対強度の1粒子モデルがナノ粒子の無秩序な集合体の測定に対して適切に適用できるという以前の指摘が確認された。電子の平均自由行程が粒子半径を越えるときは単球近似はうまくいかないが、Werner達は多くの粒子サイズや型の複雑な粒子形状がSESSAを用いてうまくモデル化できることを証明した。
多くの著者たちが弾性散乱を無視してコアシェルナノ粒子における光電子輸送のモデルを開発してきた。SESSAを用いてPowellらは弾性散乱は重要かどうかを決めるために異なる材料同士のコアシェルNPを調査した。彼らの調査によって有機物の被覆の時は弾性散乱を無視することはもっともなことであることが示された。
SESSAを利用した例として、金ナノ粒子上のC16H32COOHのSAM膜の厚みがTechaneによって調べられた。このモデル化の努力によって金ナノ粒子上のSAM膜は平坦な金上のSAM膜とよく似ているものの、同一ではないことが示された。加えて、実験データをモデル化するためにSESSAを利用すると、Shardの方法では容易に得られない情報である不純物炭素層の存在が必要とされた。(この論文では記載するものと仮定している)層の厚みの決定は金及び金ナノ粒子上のSAM膜に向いている。SESSAによって決定された14nmの金ナノ粒子上の層の厚みは以下のようなものであった:コンタミネーション0.15nm、機能的な末端COOH=0.26nm、16の炭素ユニット CH2=16x0.09=1.44nm。
Shardの方法やSESSAの多くの応用例では、NPはサイズのおいて一様で、形状は理想的に球状であるという想定を必要とする。WangやSahooやMuller達はXPS信号における不揃いや欠陥のあるNP(Ag/Au-shell/core, Au-TiO2粒子/触媒、PTFE-poly)の影響を調べた。彼らはTEMといった他の情報源からの形状に関する追加の情報を使って、適切にXPSデータをモデルを作れることが分かった。SESSAを用いてYangによってモデル化された実験データはデジタルフォームに利用可能で、Surface Science Spectraで出版された。PTFE-PMMA粒子は図1(b)の試料形状と図1(a)の試料形状を用いてTougaardによって開発されたQUASESプログラムを用いたSESSAを利用してピーク強度に基づきモデル化された。彼らはQUASESを利用してモデル化された非弾性バックグラウンドがNP構造の実際の性質を自主的に識別するのに有益であることを発見した。
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